こんにちは、町田コンディショニングジム健介の畑中健佑です。
パラリンピックのバドミントン(パラバト)は今回から正式競技となり、注目も集まっています。
以前に町田市で行われたバドミントン・インドネシア代表選手代表合宿に参加させていただいた時、その身体能力の高さには圧巻でした。
パラリンピックの中でも特に注目のバドミントンですが、今回はそのパラリンピックのバドミントンを楽しむために知っておきたいことをまとめてみました。
パラリンピックのパラバドミントンとは?
「パラリンピックってオリンピックの後にある障がいを持ったアスリートの大会ですよね?」
という認識のかたがほとんどかと思います(私もその認識でした)が、その身体能力の高さといったらスポーツ好きな健常者も太刀打ちできないくらいのものなのです!
というのも、冒頭でもお話ししたパラリンピック・インドネシア代表選手のバドミントン合宿に以前に参加させていただき、代表選手と試合した通算成績は16戦2勝14敗・・・。
私も全日本社会人シングルで抜けたり、東京都の年代別で3位になったりしたこともありますが、全く(己の名誉のためにほとんど)歯が立たずでした。
パラリンピックの歴史とは?
もともとパラリンピックは1948年に、ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院内で開かれたものです。
第二次世界大戦で主に脊髄の損傷をした兵士たちのリハビリの一環といて医師のルードウィッヒ・グッドマン博士が提案しました。
この時は現在のように競技種目は多くなく、アーチェリーの競技会でした。
そのリハビリの一環として始まったアーチェリーの競技会が開催回数を重ね、4年後の1952年には国際大会となりました。実は国際大会になってからはまだ68年しか経っていないのです。
そして、32年前の1988年のソウルオリンピックから、パラリンピックもオリンピックの後に同じ会場で行われるようになりました。それと同時に「パラリンピック」が公式名称に定められ、その由来はPara(沿う、平行)+Olympic(オリンピック)という意味からきています。
2012年にロンドンで開催されたパラリンピックは20競技、164カ国の国と地域から約4300人が参加。
2020年に行われる東京パラリンピックはそれをさらに上回り、22競技539種目が21会場で実施され参加選手も史上最多の4400人といわれています。
リハビリの一環として始まった大会が、今ではこんなに大きな規模で、障害のあるトップアスリートの祭典として成長したことはとてもすごいことですね。
パラリンピックの競技種目は?
2020年の東京パラリンピックは全部で22競技があります。その種目は
- アーチェリー
- 陸上競技
- バドミントン
- ボッチャ
- カヌー
- 自転車競技
- 馬術
- 5人制サッカー
- ゴールボール
- 柔道
- パワーリフテング
- ボート射撃
- シッティングバレーボール
- 水泳
- 卓球
- テコンドー
- トライアスロン
- 車いすバスケットボール
- 車いすフェンシング
- 車いすラグビー
- 車いすテニス
です。
東京2020パラリンピック 22競技特設ページにそれぞれの紹介動画が掲載されています。
もちろん、バドミントンの紹介動画もあります。
バドミントンは2020年の東京パラリンピックから正式競技となったので注目です。
https://tokyo2020.org/jp/games/sport/paralympic/badminton/
各競技のスケジュールは公式ホームページに掲載されており、バドミントンは2020年9月2日〜6日に東京都渋谷区にある国立代々木競技場で行われる予定です。
https://tokyo2020.org/jp/games/schedule/paralympic/
パラリンピック・バドミントン の出場資格は?
ここでは、パラリンピック・バドミントンの出場資格に絞ってお話しします。
バドミントンでは障がいの程度により、車いすを使用してプレーをするWH1・WH2の2クラス、下肢や上肢に障がいのある選手が立位でプレーするSL3・SL4・SU5の3クラス、軟骨無形成症などにより低身長の選手がプレーするSS6の合計6つにクラス分けされています。
車いす 下肢に障がいがあり、立ってプレーすることができず、車いすを使用する障がい
- WH1重い
- WH2軽い
立位
- SL3重い 下肢に障がいがあるが、立ってプレーすることができる障がい
- SL4軽い
SU5 切断や麻痺などの上肢障がい
SS6 低身長症
です。
2020年東京パラリンピック・バドミントンでは14種目、出場枠は男子46名女子44名の合計90名です。1カ国の出場枠は最大で男子11名、女子10名とされています。
パラリンピック・バドミントン のルールは?
バドミントンのルールは基本的には通常のルールとほぼ同じで、ネットの高さなども変わりません。
大きな違いといえば、車いすの選手は、シャトルを打つ瞬間には胴体の一部と車いすが接触していないといけないというところや、コートの半面でのプレーになるということくらいです。
(細かいところでいえば車いすのコートはコートマットが敷いていません。あと、ネットの株がポールに結ばれていません。これは車いすが通りやすいようにです)
立位でプレーするSL3の選手はコートの半面、SL4・SU5・SS6の選手はコートの全面でのプレーになります。
また、ダブルスに関しては上限のポイントが決まっているので、ペアを組めない組み合わせもあります。組み合わせに関しては以下のように決まっています。
⌘ WH1 WH2 (男女) 上限ポイント3
男子ダブルス 女子ダブルス ミックスダブルス 3
可能な組み合わせ
WH1+WH2(=3) WH1+WH1(=2)
組めない組み合わせ
WH2+WH2(=4)
⌘ SL3 SL4 (男子) 上限ポイント7
可能な組み合わせ
男子ダブルス 7 ○ SL3+SL4(=7) SL3+SL3(=6)
組めない組み合わせ
SL4+SU5(=9) SL4+SL4(=8)
⌘ SU5 (男子)
男子ダブルス 制限なし
⌘ SL3 SL4 SU5 (女子)上限ポイント8
女子ダブルス ミックスダブルス
可能な組み合わせ
SL3+SU5(=8) SL4+SL4(=8) SL3+SL4(=7)
組めない組み合わせ
SU5+SU5(=10) SL4+SU5(=9)
です。
詳しくは、公益財団法人 日本障がい者スポーツ協会のホームページに掲載されています。
『はてなブックマーク』するとまた記事を読み返していただくときに便利です。
パラリンピック・バドミントン 日本代表選手は?
実は世界ランキングの上位には日本人選手が多数います。その上位選手ももちろんパラリンピック代表選手として活躍が期待されています。
2020年の東京パラリンピック・バドミントン日本代表選手は
- 今井大湧(いまいたいよう)選手 SU5(上肢機能障がいなど)
- 小倉理恵(おぐらりえ)選手 WH2(座位バランスが良好な車いすのクラス)
- 里見 紗李奈(さとみさりな)選手 WH1(車いす)
- 鈴木 亜弥子(すずきあやこ)選手 SU5(上肢機能障がいなど)
- 藤原 大輔(ふじはらだいすけ)選手 SL3(大腿切断者など)
- 山崎 悠麻(やまざきゆま)選手 WH2(車いす)
といった面々です。
鈴木亜弥子選手は2017年にSU5で、また山崎 悠麻選手も2018年にWH2で世界ランキング1位になったことのある選手ですね。期待も高まります。
https://actions.yahoo.co.jp/article/parabad/各選手の詳しい情報は日本財団パラリンピック日本サポートセンターのホームページに掲載されていますので、こちらもご覧ください。
パラバドミントンの見どころ
パラバドミントンの見どころは多様性と個性です。
選手の皆さんなんらかしらのハンデをもってプレーしますが、そのハンデを克服したプレーや戦術に盛り込んでいるところが見どころです。
例えば、フットワークが苦手な選手はリストが強く、リストだけで強い球が打てたり、片腕がない選手はラケットを持つ手だけでサービスを打ったりします。
選手それぞれの個性はプレー中の見どころ!
パラバドミントンを見ることは健常者のバドミントンとは違った面白さがあります。
その点を実際にパラバドミントンプレーヤーに携わり、プレーをさせていただいた私の視点でランク別に解説させていただきます。
SU5ランクの見どころ (切断や麻痺などの上肢障害)
まず初めはSU5の選手。上半身のどこかに障がいを持っている選手です。
このランクの選手は一見健常者の方と同じレベルのプレーをされますが、バランスをとるのが非常に難しいとのことでした。
私が何回も練習させていただいたスルヨ選手も事故で片腕をなくしてから競技復帰したときになれるまで2年ほどかかったとのことでした。
試合を見てみるとほとんどハンデがないように感じられますが、その裏にはおおきな努力が見受けられます。
また、その中でも唯一顕著に出る差としては、利き腕に障害がある方は強打ができなかったり、利き腕じゃないほうの腕に障害がある方はサーブに大きな差が出るように感じました。
プレー中としては片腕が一部ない選手はバランスを取るのが難しいらしいのですが、腕が使えない分、足でバランスを取るのが非常に上手いです。
特にラウンドからのショットを打つ際の足でのバランスの取り方は非常に勉強になります。
この点も選手ごとに特性があるため、その点も踏まえて試合を見ていただけるとより楽しめると思います。
SU5でメダルが期待される選手
- 鈴木 亜弥子(すずきあやこ)選手
- 豊田 まみ子(とよだまみこ)選手
- 今井 大湧(いまいたいよう)選手
SL4ランクの見どころ (比較的軽度の下肢機能障害)
SL4 下半身のどこかに障がいを持っている選手です。
こちらのランクの特徴は下半身が動きづらいため、フットワークのスピードや動ける範囲が健常者の方に比べて落ちる傾向にあります。
しかし、そこは選手の方々は努力を重ねており、麻痺が残っている足首、長さの違う脚などでも効率よく動けるよう練習を重ねられており、ぱっと見のスピードは一般社会人の選手とほぼ変わりません。
そしてこのランクの見どころは、足が動きづらい分、ラケットワークと上半身のショットの強さが特徴的です。
相手の脚を止めるためのフェイントや、下半身がシャトルに追いついていなくても手首で強い球を打つ技術は秀でています。
この点も選手によって技巧派なのか、ショットの威力で攻めるのかを考えながら見ると非常に面白いです。
SL4でメダルが期待される選手
- 藤野 遼(ふじのはるか)選手
SL3ランクの見どころ (比較的重度の下肢障害)
SL3ランクは下半身のどこかに重い障がいを持っている選手です。
こちらのランクでは片足切断や思い麻痺など、動きがかなり制限されてしまうため、シングルスだとコートが半面になるのが特徴です。
片足をほとんど引きずりながらのフットワークになってしまうため、広範囲を守れないためです。
このランクの見どころは、長いラリーと我慢にあります。
守る範囲は狭いですが、速い球や甘い球を出してしまうと自分が動き回らなくてはいけなくなるため、ハイクリアーや、自分が動かないで済むようなドロップなどを打つことが多いです。
SL4の選手同様、スマッシュのスピードは非常に速いのですが、半面だと相手に触られる可能性が高いため、連打で決めるというよりは相手のリズムを崩したりけん制のために使っているような印象でした。
ラリーが膠着するととにかく我慢のラリーになることが多く、クリアー合戦からどこで仕掛けるか、ミスをするかという手に汗握る展開が多いです。
試合時間が1時間近くなることも珍しく無い
打つ球種の選択や精度、ロングラリーするための体力やメンタルなど、健常者のバドミントンプレーヤーが学ぶものは非常に大きい種目でもあります。
この我慢ラリーは特にシングラーの方に見ていただきたい、、、!
SL3でメダルが期待される選手
- 藤原 大輔(ふじはらだいすけ)選手
WH2、WH1ランクの見どころ (車いすのクラス)
下肢障がいがあり、立ってプレイすることができない選手のクラスです。
この中でも
- WH2 座位バランスが良好な車いすのクラス
- WH1 座位バランスが難しい車いすのクラス
と別けられます
このランクではコートが健常者の半分、さらにネットに近いフロントコートがない範囲になります。
このランクでは車いすに乗ってのプレイになるため、なかなか選手目線で試合を見ずらいかと思います。
なので、より車いすパラバドミントンを楽しむためにはご自身で車いすを体験してみましょう。
私自身福祉施設に勤めていたことがあり、その時に福祉用車いすを体験させていただきましたが、想像以上に体力を使い、また、操作が難しいです。
車いすの状態でスポーツをするのがどれだけ難しいのを感じていただけると、選手へのリスペクトも増すと思います
私が感じた車いすバドミントンの特徴は、まず他の車いす競技に比べて前後の動きが多いと感じました。
そのためシンプルな前&後ろのチェアワークの精度が最も求められ、なおかつ相手が体勢を崩してきた際の体制を整えるためのチェアワークも重要と感じました。
また、シングルスでは守る範囲が半面なため、いかにフォアハンドで打ち続けるかも重要と感じました。
ほとんどのラり―はフォアハンドで行われており、グリップの握り方もウェスタン気味で握っている方が多いいように感じました。(振りぬく方向によっては車いすにあたってしまうということもあるのかな…?今度機会があれば選手に聞いてみたいと思います)
ショットもほとんど腰から上の力で打たなければいけないため、その精度とパワーも求められる種目と感じました。
最初に前後のフットワークが重要と書かせていただきましたが、個人的な見どころはダブルスでのローテーションや態勢を整えるチェストワークの華麗さです。
ダブルスでもほとんどが前後のチェストワークなのですがその中でも時折見せる来るっと廻るようなチェストワークは見どころです!
WH2でメダルが期待される選手
- 山崎 悠麻(やまざき ゆま)選手
- 小倉 理恵(おぐら りえ)選手
WH1でメダルが期待される選手
- 里見 紗李奈 (さとみ さりな)選手
SS6ランクの見どころ (低身長)
SS6は遺伝または非遺伝性原因により身長が低い選手のクラスです。
こちらのランクでは、身体が小さい分パワーが少ないため、球速が出ずらいのとハイバックが飛ばしずらいようです。
このランクの見どころは相手を動かすためのショットの精度とコートをカバーするフットワークです。
いかにコートのぎりぎりを狙えるか、また狙える体制を作れるかが他のランクよりシビアになってきます。
フェイントなどのいわゆる難しい球はほかの種目に比べると少ないように感じました。
パッと見は小学生1.2年生の試合を見ているようですが、技術が高いため、他のランクや健常者の試合ではなかなか見れない魅力的な試合内容となります。
個人的に見るのがおすすめなランクの一つです。
SS6でメダルが期待される選手
畠山 洋平 (はたけやま ようへい)選手
パラバドミントンみどころまとめ
いかがでしたでしょうか?
普段はあまり見ることのないパラバドミントンですが、ランクやルールについて知っておくと、大会が開催された際により一層楽しめると思います。
パラリンピックの今後の課題とは?
パラリンピックが現在のような形式になったのは、32年前の1988年のソウルオリンピックからで、4年に1度の開催ということを考えると、まだまだ最近の出来事です。
オリンピック同様に、ドーピングの問題や、選手への支援体制も整っていない状況です。
そのため国や地域の経済格差や、選手個人の経済的な問題など課題は山積しています。
努力して世界ランキングトップになったとしても、現在の出場枠のシステムではパラリンピックに出場できない可能性もあります。
というのも、出場枠は男子46名女子44名の合計90名です。世界大会にしては決して多いとはいえないです。
また、車いす選手の場合は、ダブルスに最優先出場権があるので、ダブルスで出場権が確定すると、必然的にシングルスの出場権も獲得します。
つまり、車いす選手の場合、シングルスだけの選手は好成績を納めても、出場するための優先順位が下がってしまいます。出場枠にゆとりがあれば、シングルスのみの選手は、シングルスランキングリスト上位の選手から選ばれますが、ダブルスで出場する選手で出場枠が埋まってしまった場合は、いくらシングルスランキングリスト上位になっても出場できないことになります。
救済枠に関しても、開催国は男女1名、大陸枠も男女1名ありますが、出場枠を実力で獲得した場合、救済枠はなくなってしまいます。
実力があっても世界大会であるパラリンピックに出場できないという、このあたりの制度の改革は、今後の課題といえるでしょう。
まとめ
以上のこの7つの項目を知っておくことで、パラリンピックのバドミントンがより楽しんで観戦できるかと思います。
今回の東京パラリンピックから正式種目になったバドミントンは、システムが荒削りなところもありまだまだ課題や問題点も多いですが、インドネシア代表選手代表合宿に参加後に、さらに競技を好きになって楽しみにしている応援者の一人としては、これからに期待をしつつ、東京パラリンピックを応援していきます。
インドネシア代表選手代表合宿に参加した様子もぜひご覧ください。
【インドネシア代表!パラバドミントン選手の代表合宿にお邪魔しました!】
また、冒頭でもお話ししたとおり、私もバドミントン 全日本社会人シングルで抜けたり、東京都の年代別で3位になったりした経緯があります。
そのご縁もあって、町田コンディショニングジム健介では、バドミントンのラケットの取り扱いもしています。ラケット選びのご相談や試打もできますので、お気軽にご相談くださいませ。
コメントや道具に対するレビューなどお願いします